バナナ露地栽培へ移住者がゼロからの挑戦!
〜地球温暖化SDGsで、耕作放棄地を切り開く〜
夢と知恵による地方創生の物語
四国高知の南東端、室戸岬の程近くに露地栽培のバナナ農園を作った方がいます。
田村友義さんは海外を10年ほど渡り歩いた後、作家として自伝を出版し、人生ゲームのサイコロを振るように偶然、室戸市に辿り着きました。
最初は移動スーパーの仕事をしようとしましたが、上手くいかず、温かい所で畑をしたいという奥様のご意向で、温暖な気候の高知県室戸市に居を構え、畑のために土地を借りました。
しかし、借りた土地をいざ鍬で耕してみると、大きな石が多くて途方に暮れます。
「野菜は無理だ」諦めかけた田村さんの目に映ったのは元々、室戸の海岸線に点在して自生しているバナナの木でした。
室戸で自生しているバナナの木は昔、室戸の地場産業である遠洋マグロ漁業の漁師さんが東南アジアから持ち込んだものだそうです。
それを見た田村さんは「ほっといても枯れないなら、室戸でバナナ栽培ができるはず!バナナならば荒れた土地でも育てられる!」と一念発起します。
国内で消費されるバナナはフィリピン産がほとんどで、国産バナナの割合は0.1%未満と言われています。
しかも、国内ではバナナ栽培は沖縄を除いてビニールハウスで行うのが一般的で、四国での露地栽培は、お手本がなく手探りで進む難しい挑戦となります。
田村さんはバナナ栽培の勉強を始め、国産バナナの生産者さんたちに連絡をして、室戸の気候で露地栽培が可能な品種を手探りで掴みました。
今も試行錯誤の最中で、借りることの出来るいくつかの農地の中で、どの地質がバナナ栽培に適しているのかを、生えている雑草の種類などから判断するなどして、日々努力を続けています。
栽培する品種は、アップルバナナ、銀バナナ、ドアーフナムワなど国内では取扱の少ないものばかりです。
そして、去年出来たバナナは評判の美味しさ!アップルバナナはリンゴのような甘味と酸味、銀バナナはとっても甘く、ドアーフナムワは上品な味。まだ生産数は少ないですが、あっという間に売れていきました。
田村さんは言います。
「設備投資にお金をかければなんでもできるけど、そうじゃなくて、自分の知恵を使って考えるのが面白い」
与えられた自然環境の中でも、手に入るあらゆる情報を駆使して懸命に考えれば、資格がいらない仕事なら何でもできるもの、田村さんは自信を見せます。
田村さんはバナナ農家だけでなく、持ち前の器用さを活かして、建具の張り替えの仕事もしています。
「やりたいことをしながら事業もする。移住先で生きていくには一つの仕事ではリスクが高い。3つ仕事を持つのが理想。自分が地方移住者のロールモデルになれればいい」
「室戸バナナを有名にしたい。室戸ならではの海洋深層水を使った栽培にも挑戦してみたい」
自分が試行錯誤して室戸でのバナナの栽培方法を確立したら、増え続ける耕作放棄地をバナナで活用できるようにする。
お金をかけずに地域の新たな産業となるモデルを作って、お世話になっている地域のみんなに貢献したい。
田村さんは目を輝かしながら夢を語ります。
露地バナナで放棄地を切開く
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「露地バナナで放棄地を切開く」と室戸のつながり
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希少な露地栽培バナナ
室戸の自然が育む甘くて希少な『露地バナナ』の魅力 〜地球温暖化SDGsと地方創生に向けた室戸の新たな特産品〜 四国の南東端、高知県の室戸市で露地栽培のバナナが作られるようになりました。 バナナは国産品というだけでも珍しいのですが、室戸市で育てられているバナナはアップルバナナ、銀バナナ、ドワーフナムワなど、希少な品種のバナナばかりです。 アップルバナナは他のバナナに比べて小ぶり。リンゴのような酸味と濃厚な甘みを持ちモチモチとした食感です。 銀バナナは未熟の状態のときは銀色に見え、完熟しても皮が真っ黄色になりませんが際立った甘さを持ちます。 ドワーフナムワも普通のバナナよりも小さく、味は上品な甘さでモチモチとした食感です。 室戸の自然の中で露地栽培されている希少な品種のバナナは、一般的なバナナのイメージを覆す、格別な美味しさです。 令和7年現在、室戸産のバナナの生産量はまだ少ないですが、今後は生産量を増やし、人口減少が進む室戸市の新しい産品となることが期待されます。 そもそも日本で流通されるバナナは99.9%以上が輸入品です。 そのうち85%はフィリピン産です。 スーパーなどでよく見る、日本で多く流通しているバナナは「ジャイアント・キャベンディッシュ」という品種となります。 ではなぜ日本のバナナの生産量は少ないのでしょうか? 輸入バナナは一年中食べることができます。常夏の南国ではバナナに旬はありません。一年中、時期を選ばず生産できるのです。 しかし日本には季節があり、冬に実をつけても大きくなりません。5〜6月に花をつけ、10〜11月に実がなるように調整しなければ大きくて甘いバナナを収穫できないのです。 そのためタイミングが難しく栽培時期が限定されてしまいます。 さらにバナナを栽培するには、日本はちょっと冬が寒すぎるのです。 バナナは10℃以下になると生育が止まり、5℃以下になると葉が枯れてしまうため、室内に入れるか、屋外で十分な防寒対策を講じる必要があります。 その厳しい条件から、ハウス栽培を除いては、沖縄や鹿児島、宮崎などの一部でしか栽培されていませんでした。 しかし室戸に移住してきた、田村友義さんは室戸の海岸線に点在して自生しているバナナの木に注目しました。 バナナが自生するなら露地栽培もできるに違いない。田村さんは300種類以上のバナナの中から、室戸の冬に耐えられる品種を探して栽培を始めたのです。 -
室戸は世界ジオパーク
隆起する大地を肌で感じる暮らし 〜室戸世界ジオパーク〜 観光では見えない地質遺産とともに生きる文化 四国高知の南東、今も大地が隆起し続ける世界的に希少な地質遺産である室戸は、市全域がユネスコ認定の世界ジオパークです。 「ユネスコ世界ジオパーク」とは、自然と人間との共生及び持続可能な開発を実現することを目的としたユネスコの事業です。 世界で48か国・213のユネスコ世界ジオパークが認定(2024年3月現在) 日本では10の地域が登録され、その中でも、市町村の全ての範囲を認定されているのは室戸を含む3つの地域しかありません。 自然と人間が共生するジオパークには、自然の恵みを生活に取り入れる知恵や工夫が詰まっています。時代を経たその「知恵や工夫」1つ1つがとても素晴らしく魅力的です。 田舎マップでは、室戸の人たちが大切にしている、日常に溶け込む有形無形の「魅力」を紹介していきます。もしあなたが気になる「魅力」があれば画像をクリックしてみてください。次々とページを好奇心に沿って「自然と人との繋がり」を辿れば、あなただけのストーリーが生まれ、あなただけの室戸の楽しみ方がきっと見つかるはずです。 ▷地殻変動のダイナミズム◁ ー地殻変動の痕跡、大地の成り立ちを知るー 室戸では海岸や海成段丘などのあらゆるところに地殻変動の痕跡を見ることができ、新しい大地を形成する地球のダイナミズムを実感することができます。 例えば、室戸岬の遊歩道を歩けば、太古の昔に海底でできた土砂の地層が隆起して現れた縞々の岩(タービダイト層)が随所で見られます。 ▷独特な植物相◁ 室戸岬の海岸では国の天然記念物に指定されている亜熱帯性植物樹林や海岸植物群落によって独特な景観をみることができます。 例えば、海岸線には本州ではあまり見ることのできない、岩を這うように根を伸ば空に広がるアコウの木。足元にはシオギクなどの草木、リュウゼツランなどがあり、 山間部の段ノ谷山では、天然杉の巨木を多数見られます。 室戸の山々には潮風に耐えて育つウバメガシが群生し、それを原料とする良質な土佐備長炭の生産が行われ、室戸の重要な産業の1つとなっています。 ▷自然と共生する文化◁ ー海底地形と豊かな漁場ー 東海岸直近の海底地形は1000m以深の深海に落ち込む断層崖になっています。 そこに地球規模の深層大循環がぶつかり、ミネラルを豊富に含んだ深層水が深海から一気に表層まで上昇しています、その海域には良質なプランクトンの発生による豊かな生態系があり、その漁場は室戸の漁業と文化を育んできました。古より湧き上がる海洋深層水は現在では製塩やサツキマスなどの陸上養殖にも活用されています。 ▷海成段丘と美味しい農作物◁ 地殻変動によって海底が隆起した「海成段丘」では海底由来のミネラル豊富な土壌により西山台地などでは室戸の「ふるさと納税b inの返礼品」として人気No.1の農作物を栽培しています。みかん・ぽんかん・小夏・せとか・なつみなどの柑橘類が有名です。 ▷台風と建築様式◁ 土佐備長炭で繁栄した吉良川では、「水切り瓦」や「つし二階」備えた白く輝く土佐漆喰の伝統的建造物が今も残されており、隆起による段差のある地形にできた町並みには「いしぐろ」の塀など激しい台風に耐える工夫が見られます。 室戸市では今も、大地が隆起し続ける地殻変動の最前線で暮らしている人々の知恵や工夫を随所に見ることができます。そして、この地質遺産を保護し研究に活用するとともに、自然と人間との関わりを理解する場所として整備し、教育の場として、また新たな観光資源として地域の振興にいかしています。 -
三津漁港
三津の漁港では、高品質な美味しい魚が水揚げされています。この理由は科学的に解明されていて、海水自体の富栄養性によるものです。海底の形状が特殊で漁港から3kmほどで水深1000mを超える深海が存在します。深層の海水には太陽光が届かないため、表層とは異なりミネラルが消費されずに蓄積されます。室戸ではその深層の水(海洋深層水)が、海底の特殊な地形によって、表層近くまで上昇(湧昇流)してくるのです。そのため海域は、常にミネラルを豊富に含んだ海水で満ちた状態なのです。そこでは良質なプランクトンが発生し、豊かな生態系が生まれているのです。 -
だるま朝日
室戸の東海岸から朝日が上ります。海水よりも空気が冷たい冬に見られることが多いです。