室戸・四十寺山の巨岩に足跡?!
空海が妖怪を封印した“にしり岩”とは?
四国・高知県の南東端、太平洋を三方に望む室戸岬から北へ約7.2kmの場所に、四十寺山があります。この山は、古くは「室戸山」と呼ばれ、室戸岬とともに真言宗の開祖・弘法大師空海が「虚空蔵求聞持法」の修行を行った聖地の1つです。
西暦807年にはこの山に「室戸山明星院・最御崎寺(みょうじょういん・ほつみさきじ)」が建立されました。
その後、西暦1044年に最御崎寺の本堂が室戸半島の先端に移された後も、この地は真言宗の修行僧で賑わい、かつては「伽藍(修行場)」が40箇所も存在していたとされます。こうした経緯から、「四十寺山(しじゅうじさん)」と呼ばれるようになったといわれています。
そんな四十寺山にまつわるお話です――
それはまだ平安時代のこと。
若き空海が室戸岬で修行を積んでいた際、明星(金星)が空から飛来し、その光が口に入り込んだことで、空海は悟りを得たと伝えられています。
空海は「仏の教えは民衆のためにある」と語り、現在の金剛頂寺付近にて、室戸の人々を苦しめていた多くの天魔や妖怪、魑魅魍魎たちを足摺岬方面へ追い払ったといいます。
(この逸話の詳細は「天狗問答」を見てください)
この話を聞いた四十寺山の麓の農民たちは大いに喜び、「ぜひ四十寺山に巣食う妖怪たちも退治していただけないか」と空海に嘆願します。
空海はそれを快く受け入れ、四十寺山で加持祈祷を行いました。
空海が印を結び、指で空に「大般若波羅蜜多心経」を描きながら真言を唱えると、金色の経典が天空に浮かび上がり、魑魅魍魎たちは空海の掌に圧縮されるように集まりました。
空海はその手を四十寺山の山頂にある巨岩に押し付け、さらに足で踏みつけて、妖怪たちを岩の中に封印したのです。
その巨岩は高さ78m、幅12mにも及ぶ巨大な岩で、空海が踏みしめたとされる足跡は今も岩の表面に残されています。
岩の内部に封じられた妖怪たちは、今もなおうごめき続けているのか…
この巨岩は、年に数ミリずつ移動していることが確認されており、地元では「にしり岩(ずれる岩)」と呼ばれるようになりました。(諸説あり)
この逸話からは、空海という人物が個人の悟りを得たのち、その大きな霊力を室戸の人々のために使ったことが読み取れます。
空海が民の苦しみに寄り添い、手を差し伸べる姿からは、その人間的な魅力と偉大さが感じられます。
そして同時に、空海を慕う室戸の人々のあたたかな想いと、「強い力を持つ者は、その力を社会に還元しなければならない」という普遍的な教訓をも、深く読み取ることができるでしょう。
(出典:室戸市の民話・伝説 室戸市教育委員会)
四十寺山・にしり岩伝説
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「四十寺山・にしり岩伝説」と室戸のつながり
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山登り・ハイキング
室戸市は、市の全域が世界ユネスコジオパークに認定されています。ジオパークとは、自然と、歴史と、生活文化、食文化に触れ、自然と自分との関わりを知る場所のこと。自然の中に入って、室戸という変動帯特有のダイナミックで美しい自然と、そこで賢く暮らしてきた人達に触れてみよう。 -
室戸と空海さん
弘法大師空海は、室戸岬の荒々しい大自然の中で悟りを開き、 眼前に広がる“空と海”から僧名を得て、今も室戸に数々の伝説と深い信仰を刻んでいます。 四国高知の南東端、三方に太平洋を一望できる室戸岬。 そこに人の横顔に見える天然の奇岩があります。 この横顔は室戸では真言宗の開祖・弘法大師空海のものと言われていて、地元の人々が空海を慕い、大切にする想いを感じることができます。 室戸の人々は弘法大師のことを親しみを込めて「空海さん」と呼びます。 空海さんは奈良時代の終わり(774年)讃岐の国・多度郡(香川県北部)の豪族、佐伯直田公の子、眞魚として生まれました。 田公は眞魚を官僚にするため18歳の時に大学に入学させますが、眞魚は入学後にある修行僧から虚空蔵求聞持法という修行法を授かりこれに傾倒します。 この虚空蔵求聞持法を実践すべく訪れたのが、当時「最」(ほつ)と呼ばれていた最果ての地、室戸岬なのです。 虚空蔵求聞持法は真言を百万遍唱えることで、あらゆる経典を記憶できる力を得ようとする過酷な修行法です。 険峻な岩山が林立し、雄大な太平洋が迫る室戸の大自然の中で、自分を極限まで追い込んだ時、ついに眞魚は、金星が空に虚空地蔵菩薩の御姿として輝き、自分の中に飛び込んでくるという神秘体験を経て、室戸の御厨人窟にて悟りを開きます。 そして洞窟の中から見えるものは、水平線に隔てられた「空」と「海」のみだったことから、自らを「空海」と名づけました。 人生の転機を得た空海さんは804年(31歳)、遣唐使の長期留学僧として唐に渡ります。唐にて修行し、わずか1年の修行で最上位の僧「遍照金剛」となった空海さんは806年に帰国します。そして帰国後すぐに天皇の勅願を受け、空海さんは全国各地に寺院を開創します。 第二の故郷とも言える室戸にも戻り、最御崎寺(ほつみさきじ)・津照寺(しんしょうじ)・金剛頂寺(こんごうちょうじ)の三寺を開創しました。 現在この三寺は四国八十八箇所の札所となり、全国からお遍路さんが訪れるとともに、地元の人々から信仰を集めています。 また空海さんは室戸に数多くの伝説を残していて、今もその足跡を辿ることができます。 室戸岬・最御崎寺には空海の七不思議、 くわずいも・鐘石・一夜建立の岩屋・明星石・行水の池・目洗いの池・捻岩があり、金剛頂寺でも一粒万倍の釜や弘法大師行状絵詞の逸話のレリーフを見ることができます。 室戸市は太古の地殻変動の痕跡が表出し市全体が貴重な地質遺産として世界ジオパークに認定されています。 その不思議で珍しい風景と空海さんの伝説と信仰が一体となって、神秘的な歴史のロマンを感じさせる美しい地域です。 空海伝説とジオパークを巡る旅・室戸にぜひ足を運んでみてください。 -
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