海洋深層水の資源的有効性の実証とその実用化をめざして、産・学・官の連携のもと、多分野において基礎から応用まで幅広い研究を進めています。(高知県)
高知県海洋深層水研究所
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「高知県海洋深層水研究所」と室戸のつながり
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海洋深層水の神秘の味
太古の海が育んだ室戸の海洋深層水─命を潤すその力が、いま食・健康・地域再生の未来を変える。 海洋深層水とは、水深200メートル以深に存在し、地球規模で循環する清浄かつ栄養豊かな海水のことです。この水は古来より海を豊かなものとし、室戸の生きとし生けるものの命を紡ぎ続けてきました。 室戸の文化文明を発展させ続けてきたこの水の特性には、いまだ解明されていない可能性が多く秘められており、現在もさまざまな分野で研究が進められています。そして今後のさらなる活用にも、大きな期待が寄せられています。 四国・高知県の最南端。太平洋を三方に望む室戸岬の周辺には、日本でも屈指の“急深海域”(岸からいきなり深くなる海)が広がっています。 そのため、室戸は三方に50kmを越える海岸線をもちながらも、海水浴場がないという稀な地域です。 海岸から沖合わずか2〜3kmで、水深は一気に1000mへと達し、まるで海がそのまま断崖になったかのような、さらなる急峻な海底地形が、室戸東海岸には存在します。 この特異な地形が、室戸にさらに深い海洋深層水─“太古の海”を呼び込む力を与えているのです。 室戸岬から東に続く海岸線は、こうした地形的特性が着目され、1985年に科学技術庁(現・文部科学省)のアクアマリン計画により「海洋深層水資源の有効利用技術に関する研究」のモデル海域に指定されました。 室戸海域が研究フィールドに選定されたことを契機に、この海は全国的な関心を集めるようになります。 室戸には大都市近郊に見られるような大河川がないため、人間生活による自然環境汚染の影響が少なく、採水された海水は細菌数も非常に低く、清浄性に優れています。 さらに、窒素・リン・ケイ素などの無機栄養塩を豊富に含み、ミネラルバランスにも優れた高栄養な海水となっています。水温は年間を通じて約9.5℃と安定しており、発酵・成長・癒しなど、多彩な可能性を秘めた“命の水”として注目されています。 1989年には、室戸市に日本初の陸上型取水施設「高知県海洋深層水研究所」が開設され、海洋深層水の採水が本格的に始まりました。この海洋深層水は、室戸にとって“史上最大の自然の恵み”となったのです。 現在も高知県を中心に、官民が一体となって海洋深層水の研究と実用化に取り組んでおり、その活用は食品、農業、養殖、美容など、さまざまな分野に広がりを見せています。 ここでは海洋深層水が室戸でどのように活用されているのかを見ていきます。 下部の「室戸のつながり」の欄で、それぞれの知られざる海洋深層水の魅力に触れてください。 ①室戸の美味しい魚:ミネラル豊富な海洋深層水で満ちる海域が育てた、室戸の水産業 ②ミネラルウォーター:驚くほどピュアで美味しい!健康と災害備蓄を支える高機能さ ③製塩:料理の味が変わる!深海の恵みが生んだ「天然ミネラル塩」威力 ④陸上養殖 ・すじ青のり:「青のりの最高峰」─深層水が育む極上の風味 ・プラチナサツキマス:「幻の魚」室戸から復活─深層水で育てた極上の逸品 ・プライムオイスター:最高峰の「旅する牡蠣」室戸海洋深層水で磨かれた味 ⑤しいたけ栽培:ぷりぷり食感と濃厚旨味の逸品/室戸の極上椎茸 ⑥シレスト室戸:“深層美容”と“健康増進”を叶える癒しの楽園 ⑦深海生物漁:未踏の深海で夢を追う「深海生物漁師」の地方創生への挑戦 こんなにも海洋深層水が活躍するのには、やはり室戸の地形が大きく関係しています。 深海が近い室戸では、陸上に設けられた施設から取水管を海へと伸ばすことで、近距離から安定して海洋深層水を確保することが可能となっているのです。 この条件を満たす地形は、国内でも極めて稀です。 そもそも海洋深層水は、アラスカ沖などで冷たい海水が沈み込み、数千年の時をかけて地球の海底を巡りながら熟成されたもの。そして、室戸沖に到達した海底1000mのその水は、海底の断崖にぶつかり、勢いよく湧昇。 この海底から海洋深層水を運んできてくれる「湧昇流を生み出す海底断崖地形」こそが室戸海洋深層水の生みの親ともいえる貴重な存在なのです。 この偉大な自然の力を利用し、室戸では水深320〜344m付近から海洋深層水を取水しています。これは深海1000mの効果性の高い深層水を低コストで取得できる大きな利点です。 室戸海洋深層水は、地球規模の海洋循環と室戸岬の特異な地形が生み出した特別な水。 その清浄さと栄養価、冷たさと安定性は、数千年の旅路を経て湧き上がった「地球の記憶を宿した水」だといえるでしょう。 むかしむかし、海洋深層水に海洋深層水という名前が付いていなかった頃から、この「海の恵みの水」は室戸の漁業や文化の繁栄を支えてきました。 古来から魚を育て、人の命を育ててきたこの「水」は、現代の研究、技術によって、より成長と癒しの力を増して、今、室戸から世界へと広がり始めています。 -
赤穂化成株式会社
「新しい海洋文化」の創造にチャレンジし、お役様に喜んでいただける商品を提供していきながら、広く社会に貢献出来ることを念願しています。 -
サツキマスの陸上養殖
室戸の海洋深層水が育てた“プラチナサツキマス” ─幻の味を未来へつなぐ地域再生プロジェクト 室戸の「プラチナサツキマス」は、幻の魚・サツキマスを海洋深層水で育てる、先進的かつ挑戦的な陸上養殖プロジェクトです。 サツキマスは、美しい川で生まれ、豊かな海で育ち、再び川へと帰る“回遊するアマゴ”です。その希少性と繊細な味わいから「幻の魚」とも称されます。 かつては高知県の川や海でも見ることができました。しかし、河川環境の変化により天然個体は激減し、今では“幻の魚”とまで呼ばれる存在に。 室戸では、この貴重な魚を未来につなげようと、海洋深層水を活用した陸上養殖に挑戦しています。 室戸は、生活排水の流れる大河川がなく、海はひときわ清らか。 さらに、海底が断崖になっているため、太陽光が届かない深海から湧昇流として運ばれてくる水—それが水深1000mから昇ってくる海洋深層水。 この水には、植物プランクトンによって消費されずに残されたミネラルが蓄積されており、室戸の養殖に理想的な条件をもたらしています。 この深層水は水深344mからポンプで汲み上げられ、この清浄な海洋深層水のおかげで、薬剤を使わずに陸上養殖を行うことが可能になりました。そのため食の安全性を確保した上で、高品質な魚を育てることができるのです。 養殖を担うのは赤穂化成株式会社。高知県海洋深層水研究所や室戸漁業指導所と連携し、2020年にはついに約500尾の出荷に成功。 「室戸プラチナサツキマス」としてブランド化され、地域の希望として注目を集めました。 生産者は語ります— 「成長に合わせて水槽内の密度を調整し、ストレスの少ない環境を整えています。天然ものは旬が短いですが、海洋深層水の恩恵により、極上の“旬”を長く味わえる魚に育てています」 銀色に輝く魚体は、“プラチナ”の名にふさわしく、目を見張る美しさ。マリネ、箱鮨、焼き物、煮物など、和洋を問わずあらゆる料理にマッチし、上品な甘みとしっとりとした食感が絶品です。 海洋深層水を活用したサツキマス養殖は、海洋深層水は年間を通して安定した低温なため、水温管理に必要なコストと環境負荷を抑えられるという環境配慮型のモデルとしてだけでなく、室戸高校との連携による教育プログラムや、地域雇用やブランド振興にも貢献しています。 地域おこし協力隊との協働プロジェクトにて「にっぽんの宝物 世界大会」への出場。室戸高校の生徒による商品開発やPR活動など積極的な活動が注目されます。 室戸産のこの極上サーモンは、今後、地元のホテルや飲食店で提供されるなど、地元消費が進むことで、地域活性化の起爆剤となる期待も高まっています。 「幻の魚」を次世代へとつなぐこの取り組みは、まさに室戸の新たな海洋文化の象徴となりつつあるのです。 -
旅する牡蠣の秘密
室戸海洋深層水で磨かれた味ー最高峰の「旅する牡蠣」 室戸の〈プライムオイスター〉は、まるで旅をするように産地をめぐる—そんなドラマを秘めたブランド牡蠣です。 海洋深層水という神秘的な海の力によって磨き上げられたこの牡蠣は、食卓に届くまでの物語も含めて、極めてユニークな存在です。 室戸沖の海は、生活排水が流れ込む大河川が存在せず、凛とした清らかさを保っています。さらに海底が急峻な断崖となっているため、太陽光が届かない深海から湧き上がる水—それこそが海洋深層水。水深1,000メートルから湧昇流として運ばれてくるこの水には、植物プランクトンに消費されずに残されたミネラルが豊富に蓄えられており、室戸の海産物に理想的な環境をもたらしています。 プライムオイスターを生産している赤穂化成株式会社の川島さんはこう語ってくれました。 「牡蠣の清浄性と味の両立によって付加価値を高めるために、この室戸の海洋深層水の地まで牡蠣を旅させているんです」 「生食用にするために必要な時間は48時間程度ですけど、長期間ミネラル豊富な海洋深層水に浸すことで、牡蠣をより美味しくしています」 「旅」という言葉が示す通り、室戸で行われているのは“畜養”。兵庫県・坂越の海域で育った牡蠣を室戸へ運び、海洋深層水に長期間浸すことで、旨みを引き出し“ととのえる工程”が施されます。 いわば、牡蠣の“デトックス”ともいえるこの工程が、味と安全性の両方を飛躍的に高めてくれるのです。 厚生労働省が定める生食用牡蠣の水質基準は極めて厳格ですが、室戸の海洋深層水はその基準をしっかりとクリア。しかも、ミネラルが豊富なその水が、牡蠣に新たな旨みを与え、プレミアムな味わいへと昇華させてくれます。薬剤に頼ることなく、安全と美味しさを両立するこのプロセスを経て、坂越産の牡蠣は「室戸のプレミアムオイスター」として新たな命を吹き込まれるのです。 今、室戸市では海洋深層水の利活用が多分野に広がりつつあります。製塩、養殖、飲料開発など、海の資源を活かした取り組みのなかで、「プライムオイスター」はまさに“新しい海洋文化”の象徴的存在。 訪れた際には、室津港すぐの「港の上」釜飯の名店「初音」で味わえますし、ふるさと納税を通じて自宅に迎えることも可能です。 潮の香りを感じながら、「旅する牡蠣」に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。 -
青のりの最高峰、すじ青のり
室戸の深海の恵みを食卓へ!青のりの最高峰『すじ青のり』があなたの料理に魔法をかける。 「すじ青のり」とは、青のりの中でも香り・色・口どけが最も優れた極上の品種です。 香り成分が他種よりも豊富で和洋を問わず幅広い料理と調和し、食卓に豊かな風味と彩りを添えます。その存在感は、地元の食文化に深く根ざし、ひとふりで料理の印象を一変させて、ワンランクもツーランクも上の料理に変えてくれます。 かつて、四万十川流域は国内シェア90%を誇る一大産地でした。しかし、水温の上昇など環境の変化により、天然のすじ青のりは激減してしまいました。 「青のりの最高峰」とも称されるこの希少な海藻を復活させるべく、高知大学海洋植物学研究所は海洋深層水を活用した養殖技術を開発。 平成16年(2004年)、室戸岬町高岡漁港にて陸上養殖が本格的に始まりました。 流入する大都市河川もなく綺麗な室戸の海。その海底の断崖を湧昇流が運んできた1000m以深の海流を深度344mからポンプでくみ上げる海洋深層水は、清浄でミネラルが豊富。藻の成長に理想的な環境で、安定的かつ持続可能な養殖が可能となっています。 ある生産者はこう語ります。 「ある程度育つと、養殖池に養分を追加する必要はありません。自然の“海洋深層水”そのものが海苔の養分となるのです。まさに、室戸の海がもたらす恵みです。藻の成長に合わせ、水槽を入れ替えて適切な密度に管理していきます。」 成熟した青のりから胞子を採取し、ていねいに培養。深層水の清浄性により雑味が抑えられた養殖品は、青のり本来の香りと味わいを最大限に引き出し、「室戸の味」として特産品や土産品として定着しています。 室戸産のすじ青のりは、一年を通して安定供給が可能。季節に左右されず、香り・色・口どけのすべてにおいて高品質を保っています。 さらに、カルシウム・鉄分・マグネシウム・ビタミンA・B2・C・Eなどを豊富に含む、栄養価にも優れた海藻です。 市内では原藻・粉末タイプなどが販売され、観光客のお土産としても人気を集めています。 また、ふるさと納税の返礼品にも採用され、室戸ブランドの中核を担う存在として全国から注目を集めています。 室戸の豊かな自然と人々の情熱が育てた「すじ青のり」。 そのひと片には、海洋深層水の生命力と室戸の文化が織り込まれています。 料理に添えるたび、海と人のつながりを感じながら、私たちの暮らしにそっと彩りを加えてくれることでしょう。