室戸の人は言います。
「室戸では本カツオより“スマカツオ”の方が好きな人が沢山いるよ“ハガツオ”とか“モンズマ”とかは食べたことある?」
高知県といえば「カツオのたたき」が有名なので、県外の人がカツオと聞いて思い浮かべるのは「本カツオ」だけかもしれません。しかし、有名ではない、メディアでは話題にならない美味しいものが産地にはたくさんあります。室戸にも名前の知られていない美味しい魚がたくさんあるのです。
室戸岬は、太平洋に突き出た地形で、黒潮に近く、昔からカツオ漁が盛んな地域です。そのため、室戸=カツオという印象が強いのかもしれませんが、室戸近海は、黒潮の流れ、海洋深層水の湧昇によるミネラル豊富な海域など、様々な好条件が揃う豊かな生態系がある特別な漁場です。
たとえば大敷網漁では年間に150種を越えるほど、さまざまな魚が混獲され、季節ごと旬の美味しい魚がうつり変わるのです。
だからこそ、声を大にして伝えたいのです。「室戸の魚は本カツオだけじゃない!」室戸には、カツオを含めて、それぞれに個性と旬の魅力を持った魚たちがいます。
今回は、その中から「カツオ」と名のつく、選りすぐりの美味しい魚を地元で親しまれている呼び方とともにご紹介します。
それぞれの魚がどのように美味しいかという詳しい説明は
下の「つながり」ページにありますので、そちらもぜひご覧ください。
①カツオ
黒潮に乗って、室戸に“季節(春秋)の喜び”を運ぶ魚
②スマカツオ
室戸ではカツオよりも人気?知る人ぞ知る冬の絶品
③ハガツオ
旬が待ちどおしい!採れた日しか味わえない幻の魚の美味しさ
④モンズマ
全身トロ?身に浮き出た星の紋章が美味しさの証
室戸の人はこうも言います。
「本当に美味しい魚は、値段だけではわからない。知識がないとね!都市部では、値段と味が比例していないことが結構あるよね。肝心の“食材”以外にも費用がかかってるからなのかもしれないね。脂の甘さは直感的にわかりやすい美味しいさではあるけど、それだけじゃなくて、それぞれの魚種で違う“食感とか身の旨さ”を味わってほしい。室戸みたいな田舎に来たら、安価なものでも旬を知って食べることで、驚くほどの美味しいさに出会えるよ」
産地には、都会では知られていない魚や食材が、驚くほどの美味しさを秘めています。産地ならではの“少量多品種の魅力”はまだ広く知られていませんが、これは田舎暮らしの楽しみのひとつです。
都市部では「大勢の人に安定供給できること」が前提のサービスが中心にならざるをえません。また表面的な地方観光でも、知名度のない産品に触れる機会は限られています。
だからこそ、情報を知ったうえで産地に行って、“少量多品種の魅力”を堪能してほしい。“旬の美味しさを安価で味わう楽しさ”を、室戸でぜひ体験してみてください。
カツオだけじゃない!
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「カツオだけじゃない!」と室戸のつながり
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スマガツオ
冬の室戸の食卓に並ぶ“スマカツオ”は、脂のりも旨味も抜群。それでいて手に入りやすく、本カツオより好きと評判の魚。特別なごちそうが日常にあるという贅沢こそ、室戸で暮らす人々のリアルな豊かさです。 スマカツオ(ヒラソウダカツオ)は、サバ科ソウダガツオ属の魚です。 他の地域で「スマ」というと別の魚種を指す場合がありますが、室戸ではヒラソウダカツオのことを「スマカツオ」と呼んでいます。「スマカツオ」は地元では大人気で、室戸のご家庭でよく食べられています。室戸では、大敷網漁でスマカツオが漁獲されます、旬は冬。 地元では「カツオよりスマカツオの方が好き」と言う人も多く、しかも、たくさん獲れるため、室戸で暮らす人々にとっては、美味しくて手に入りやすい“日常のごちそう”。都市部で暮らす人々の中には「美味しいものは高い」という固定観念をもつ人も多いと思いますが、それを見事に打ち破ってくれる魚です。 旬の時期に脂がのったスマカツオは、藁焼きにしても絶品。「本カツオよりスマカツオの方がうまい」と語る地元の声も少なくありません。ある人はこう言います。「旬は小さいやつでもうまいよ。室戸のスーパーにも並ぶし、その値段を見てみてよ。まずは買って食べてみて。うまさにビックリするき」 もし冬に室戸を訪れることがあれば、ぜひ飲食店やスーパーで「スマカツオ」を探してみてください。地元の人に「スマカツオありますか?」と尋ねれば、あなたの見る目の高さに驚いてくれるはずです。そして、きっと喜んで室戸自慢の美味しさを語ってくれるでしょう。 室戸近海は、黒潮の流れ、急深な海底地形、海洋深層水の湧昇によるミネラル豊富な海域など、様々な好条件が揃う豊かな生態系がある特別な漁場です。だから都市部では味わうことのできない“特別な旬の魚”と出会うことができます。 私たちが伝えたいのは、地元の人々が日々の暮らしの中で大切にしている、けれど声高に語られることのない価値です。それは、自然の恵みを生活に取り込む営みであり、旬の素朴な楽しみ。大量生産や安定供給には向かないけれど、少量多品種だからこそ生まれる豊かさ。鮮度が落ちる前に味わえる、地産地消の贅沢。そうした“暮らしの中の価値”を、都会に暮らす人々にも知ってほしい。 そして、感じてほしいと願っています。 -
ハガツオ
ハガツオは市場に出回りにくい希少な魚で、旬の美味しさは格別!地元の人々がその季節を心待ちにし、藁焼きで楽しむ味わいは室戸でしか出会えない贅沢。深海から湧くミネラル豊富な海水が、この特別な魚を育んでいます。 ハガツオ(キツネガツオ)は、サバ科ハガツオ属の魚で、大敷網や夜の海に灯りを焚いて魚を寄せる「夜炊き漁」で漁獲されます。 本カツオも“足が早い”ことで知られていますが、ハガツオはそれ以上。鮮度の劣化がとても早いため、産地で食べるのが一番とされています。陸路での輸送は関西までが限界では、という声もあるほど。関東の高級店には空輸されることもあります。 ハガツオの魅力は、なんといっても「身の美味しさ」。1年中楽しめる魚ですが、最も美味しいのは冬から初春にかけて。旬は脂の美味しさが際立ちます。ハガツオは脂がのるにつれて、身の色が淡いピンク色に変化していきます。室戸では「何月に食べたハガツオが一番うまかった」と語りながら、つぎに訪れる旬を期待している人も沢山います。 脂がのった旬の時期には室戸の伝統調理「藁焼き」が真価を発揮します。私は2月に室津港の「港の上」にある飲食店で、何気なくメニューから「地魚のたたき」を注文しました。たまたまその日の地魚が「ハガツオ」だったのです。その美味しさは、ズバ抜けていました。これはもう文章では伝えきれません。室戸に来て、実際に食べてもらうしかありません。 最近は漁獲量が減っていて、水揚げされた日でも飲食店で出会えるかは運次第。メニューに載っていなくても、お店の人に聞いてみてください。きっと「ハガツオ」の美味しさを語ってくれるはずです。 室戸近海は、黒潮の流れ、急深な海底地形、海洋深層水の湧昇によるミネラル豊富な海域など、様々な好条件が揃う豊かな生態系がある特別な漁場です。だから都市部では味わうことのできない“特別な旬の魚”と出会うことができます。 私たちが伝えたいのは、地元の人たちが日々の暮らしの中で大切にしている、でも表に出てこない価値です。それは、自然の恵みを生活に取り込む営みであり、旬を楽しむ素朴な喜び。大量生産や安定供給には向かないけれど、少量多品種だからこそ生まれる豊かさがあります。鮮度が落ちる前に味わえる、地産地消の贅沢。 そんな“暮らしの中の価値”を、都会に暮らす人にも知ってほしいし、感じてほしいと思っています。 -
モンズマ
胸ビレに星の紋が多いほど脂がのる室戸の幻の魚「モンズマ」は、“全身トロ”とも称される贅沢な味わい。海洋深層水が育む豊かな海の恵みを、地元の人々は家庭の食卓で楽しんでいます。自然と共に暮らす室戸では、都会では得られないスローライフの魅力と食文化が息づいています。 「モンズマ」(ヤイト)は、サバ科スマ属の魚です。 胸ビレの付け根に、星のような模様(紋)が3〜6個ほど並んでいるのが特徴で、この紋が多いほど脂がのっている証とされています。この模様が名前の由来となり、室戸では「モンズマ」と呼ばれています。 星の数が多いほど脂がのっている証拠。本カツオは皮目に脂がのるのに対し、紋スマは身全体に脂がまんべんなくのってくるのが特徴です。刺身にすると包丁に脂がびっしりとつくほど。大げさかもしれませんが、私の印象では「全身がトロ」と言っても過言ではありません。目利きのポイントとして、地元の漁師さんや料理人さんの間では、「顔が小さくて体が太い“小顔ちゃん”が一番」と言われ、脂のりも良いとされています。 室戸近海は、黒潮の流れ、急深な海底地形、海洋深層水の湧昇によるミネラル豊富な海域など、様々な好条件が揃う豊かな生態系がある特別な漁場です。だから都市部では味わうことのできない“特別な旬の魚”と出会うことができます。 私たちが伝えたいのは、地元の人たちが日々の暮らしの中で大切にしているけれど、都会にはなかなか届かない“価値”です。それは、自然の恵みを生活に取り込む営みであり、旬を楽しむ素朴な喜び。大量生産や安定供給には向かないけれど、少量多品種だからこそ生まれる豊かさがあります。鮮度が落ちる前に味わえる、地産地消の贅沢。 そんな“暮らしの中の価値”を、都会に暮らす人にも知ってほしいし、感じてほしいと思っています。 -
カツオ
黒潮が流れ込む室戸岬沖では、春の初鰹の爽やかさと秋の戻り鰹の濃厚さを季節ごとに味わえます。江戸時代から続く漁と食文化は、刺身や藁焼きとして地元の暮らしに根づき、今も室戸の日常を映す豊かな恵みとなっています。 カツオ(本カツオ)は、サバ科カツオ属の黒潮を泳ぐ回遊魚です。室戸では、江戸時代にカツオ漁が始まったとされており、現在も引き縄(トローリング)などによる漁が行われています。室戸沖は、黒潮が流れ込む好漁場です。 春になると、初鰹(ハツガツオ)が室戸岬沖を流れる黒潮に乗り、餌の豊富な三陸沖へと北上していきます。その姿は、まるで春の風を切って泳ぐ使者のようです。 初鰹の味は、「春の海の爽やかさ」をそのまま舌で感じるような、清涼感あふれる味わいが特徴です。脂は少なめ、赤身はキュッと引き締まり、透明感のある身はさっぱりとした旨味ともちもちした食感が評判です。 春の縁起物として珍重され、江戸時代には「女房を質に入れてでも食え」と言われるほど、初物としての価値が高かったそうです。 おすすめの食べ方はもちろん「刺身」。脂が少なめなのでさっぱりとして沢山食べたくなる美味しさです。昨今では“脂がのった方が良い”とする風潮があると感じていますが、サッパリした刺身の美味しさを、室戸ならではの厚目に切った刺身で口いっぱいに感じてほしいと思います。 高タンパク・低脂肪で、DHA・EPAも豊富に含まれています。ビタミンB12やビタミンDも摂取できるため、春の体調管理にもぴったりです。 8月頃になると、三陸沖で豊富な餌を食べた鰹が「戻り鰹」として南下し、室戸岬を通過していきます。春の初鰹とは異なる味わいを持っており、ひとことで言えば、濃厚で脂がのった“とろカツオ”です。初鰹の透明感のある赤身とは対照的で、皮目の脂の甘みとカツオ本来の旨味が重なり、深みのある味わいになります。 おすすめの食べ方は「藁焼き」です。脂が多い皮目を藁で炙ることで脂の美味しさが際立ち、表面に香ばしさが加わります。酢飯と組み合わせて海苔巻きにした「土佐巻き」も、濃厚な味がご飯やお酒とよく合います。 戻り鰹は脂質が多い分、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸が豊富です。脳の活性化や血液サラサラ効果が期待できるほか、ビタミンDやB群もたっぷり含まれています。 室戸と本カツオのつながりは、歴史・漁業・食文化の三層にわたって深く根づいています。鮮度抜群のカツオの刺身やタタキは、地元の誇りであり、季節の便りでもあります。地元の人々は、カツオの回遊や漁獲量の変動を、自然のリズムとして受け止め、暮らしに取り込んできました。それは単なる漁獲や名産品ではなく、海と人の記憶が織りなす文化そのものです。 室戸の海にカツオが跳ねるたび、そこには人々の営みと季節の喜びが重なっているのです。