黒潮が流れ込む室戸岬沖では、春の初鰹の爽やかさと秋の戻り鰹の濃厚さを季節ごとに味わえます。江戸時代から続く漁と食文化は、刺身や藁焼きとして地元の暮らしに根づき、今も室戸の日常を映す豊かな恵みとなっています。
カツオ(本カツオ)は、サバ科カツオ属の黒潮を泳ぐ回遊魚です。室戸では、江戸時代にカツオ漁が始まったとされており、現在も引き縄(トローリング)などによる漁が行われています。室戸沖は、黒潮が流れ込む好漁場です。
春になると、初鰹(ハツガツオ)が室戸岬沖を流れる黒潮に乗り、餌の豊富な三陸沖へと北上していきます。その姿は、まるで春の風を切って泳ぐ使者のようです。
初鰹の味は、「春の海の爽やかさ」をそのまま舌で感じるような、清涼感あふれる味わいが特徴です。脂は少なめ、赤身はキュッと引き締まり、透明感のある身はさっぱりとした旨味ともちもちした食感が評判です。
春の縁起物として珍重され、江戸時代には「女房を質に入れてでも食え」と言われるほど、初物としての価値が高かったそうです。
おすすめの食べ方はもちろん「刺身」。脂が少なめなのでさっぱりとして沢山食べたくなる美味しさです。昨今では“脂がのった方が良い”とする風潮があると感じていますが、サッパリした刺身の美味しさを、室戸ならではの厚目に切った刺身で口いっぱいに感じてほしいと思います。
高タンパク・低脂肪で、DHA・EPAも豊富に含まれています。ビタミンB12やビタミンDも摂取できるため、春の体調管理にもぴったりです。
8月頃になると、三陸沖で豊富な餌を食べた鰹が「戻り鰹」として南下し、室戸岬を通過していきます。春の初鰹とは異なる味わいを持っており、ひとことで言えば、濃厚で脂がのった“とろカツオ”です。初鰹の透明感のある赤身とは対照的で、皮目の脂の甘みとカツオ本来の旨味が重なり、深みのある味わいになります。
おすすめの食べ方は「藁焼き」です。脂が多い皮目を藁で炙ることで脂の美味しさが際立ち、表面に香ばしさが加わります。酢飯と組み合わせて海苔巻きにした「土佐巻き」も、濃厚な味がご飯やお酒とよく合います。
戻り鰹は脂質が多い分、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸が豊富です。脳の活性化や血液サラサラ効果が期待できるほか、ビタミンDやB群もたっぷり含まれています。
室戸と本カツオのつながりは、歴史・漁業・食文化の三層にわたって深く根づいています。鮮度抜群のカツオの刺身やタタキは、地元の誇りであり、季節の便りでもあります。地元の人々は、カツオの回遊や漁獲量の変動を、自然のリズムとして受け止め、暮らしに取り込んできました。それは単なる漁獲や名産品ではなく、海と人の記憶が織りなす文化そのものです。
室戸の海にカツオが跳ねるたび、そこには人々の営みと季節の喜びが重なっているのです。
カツオ
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「カツオ」と室戸のつながり
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カツオのたたき(藁焼き)
室戸伝統の「藁焼き」の技法は、旬の魚の皮目の脂を香ばしく引き立て、炎と香りが一体となって唯一無二の味わいを生み出します。そこに地元柑橘のタレや特別なお塩が、美味しさに感動的な奥行きを添えます。 高知県を代表する魚料理「鰹のタタキ」。 その真価は、藁焼きの本場でこそ発揮されます。 都市部でも鰹のタタキは提供されていますが、大量生産のガス焼きでは、藁焼き特有の香ばしさと深い味は再現しきれません。 炎が立ち上がる瞬間、藁が燃える香りが鰹にまとわりつき、皮ぎしの脂に絶妙に火を入れていく、その一口は感動的な美味しさです。 この料理には、江戸時代の逸話も残されています。 土佐藩主・山内一豊が、生魚による食中毒を防ぐため「焼いて食べるように」と領民に命じたところ、刺身を諦めきれなかった土佐の人々は、表面だけを炙って“焼き魚”に見せかけて食べ続けたとも言われています(諸説あり)。 鰹は「足が速い魚」と呼ばれるほど、鮮度の劣化が早い魚。だからこそ、旬の脂がのった焼きたての鰹を味わうことは、何よりの贅沢なのです。 美味しさの鍵は、一本一本の鰹の品質にあります。鮮度、脂ののり、中には「ゴシ」と呼ばれる部分的に硬くなった部位があるものもあり、個体によって味わいが異なるため、地元の人々は厳しい評価基準を持って、最良の一本を見極めます。 そして、藁焼きの魅力は何といっても超高温で瞬時に炙る技術。皮目を香ばしく焼き切り、藁ならではの燻した香りが鰹にまとわりつく。中はレアのままで温められた皮目の脂が口の中に広がる─これこそが、鰹のタタキの真骨頂です。 タタキの味を決めるのは、魚だけではありません。 タレに使われる柑橘にも、室戸ならではのこだわりがあります。地元で採れる多種多様な柑橘から、店ごとに選び抜かれた果汁が使われ、一皿ごとに異なる風味が楽しめます。その香りと酸味が、鰹の脂と絶妙に調和するのです。 たたきには欠かせない「お塩」はもちろん室戸産、ミネラル豊富な海洋深層水を丁寧に濃縮して作る塩が魚の美味しさを引き出します。 室戸では「海の駅とろむ」で、藁焼き体験ができます。目の前で炎が立ち上がり、鰹が焼き上がる様子を見届けたあと、その場で焼きたての「温たたき(ぬくたたき)」を味わえる─ これは、藁焼きの本場・高知県でもなかなかできない貴重な体験です。 炎の香りと海の風を感じながら頬張る一口は、まさに室戸の海そのもの。その味は、記憶に深く刻まれることでしょう。 -
旬のお刺身(7月)
旬のお刺身盛り合わせ。白身魚3種類の食べ比べは、それぞれの魚種の美味しい違いを感じられて、楽しかったです。どれも当日に室戸でとれた新鮮なお魚です。 -
鰹とフエダイの刺身
美味しい刺身が、二種類。うらやましいです。 -
皿鉢料理(さわちりょうり)
いくつもの大皿に海の幸、山の幸をてんこ盛りにした祝いのお料理です。美しいお皿に豪快に盛り付けます。 -
鰹のなめろう
鰹の濃い旨味と味噌。ご飯が進みすぎます。 -
鰹のハランボ塩焼き
「はらんぼ」とは、魚のお腹の大トロ部分のこと。室戸の脂の乗った大トロ鰹の塩焼きです。柑橘を絞って、おつまみにたまらない一品。 -
土佐巻き
土佐独自の太巻き。鰹のたたきの巻き寿司です。新鮮鰹の藁焼と絶妙な薬味に酢飯と海苔があいます。 -
星空キャンプミーティング
令和6年3月9日(土)開催!キャンプ場貸し切り!ご予約はこちら TEL:0887-22-0574 電車も高速道路もない室戸で見る『満天の星空』 と産地で『カツオの藁焼き体験』 & 『室戸のジビエ(別途500円)』が提供されます。ど田舎の山の中でキャンプを楽しみながら、産地でしか味わえない室戸グルメを堪能してください🏕※キャンプ道具は準備してください。レンタルはありません。 -
カツオだけじゃない!
室戸の人は言います。 「室戸では本カツオより“スマカツオ”の方が好きな人が沢山いるよ“ハガツオ”とか“モンズマ”とかは食べたことある?」 高知県といえば「カツオのたたき」が有名なので、県外の人がカツオと聞いて思い浮かべるのは「本カツオ」だけかもしれません。しかし、有名ではない、メディアでは話題にならない美味しいものが産地にはたくさんあります。室戸にも名前の知られていない美味しい魚がたくさんあるのです。 室戸岬は、太平洋に突き出た地形で、黒潮に近く、昔からカツオ漁が盛んな地域です。そのため、室戸=カツオという印象が強いのかもしれませんが、室戸近海は、黒潮の流れ、海洋深層水の湧昇によるミネラル豊富な海域など、様々な好条件が揃う豊かな生態系がある特別な漁場です。 たとえば大敷網漁では年間に150種を越えるほど、さまざまな魚が混獲され、季節ごと旬の美味しい魚がうつり変わるのです。 だからこそ、声を大にして伝えたいのです。「室戸の魚は本カツオだけじゃない!」室戸には、カツオを含めて、それぞれに個性と旬の魅力を持った魚たちがいます。 今回は、その中から「カツオ」と名のつく、選りすぐりの美味しい魚を地元で親しまれている呼び方とともにご紹介します。 それぞれの魚がどのように美味しいかという詳しい説明は 下の「つながり」ページにありますので、そちらもぜひご覧ください。 ①カツオ 黒潮に乗って、室戸に“季節(春秋)の喜び”を運ぶ魚 ②スマカツオ 室戸ではカツオよりも人気?知る人ぞ知る冬の絶品 ③ハガツオ 旬が待ちどおしい!採れた日しか味わえない幻の魚の美味しさ ④モンズマ 全身トロ?身に浮き出た星の紋章が美味しさの証 室戸の人はこうも言います。 「本当に美味しい魚は、値段だけではわからない。知識がないとね!都市部では、値段と味が比例していないことが結構あるよね。肝心の“食材”以外にも費用がかかってるからなのかもしれないね。脂の甘さは直感的にわかりやすい美味しいさではあるけど、それだけじゃなくて、それぞれの魚種で違う“食感とか身の旨さ”を味わってほしい。室戸みたいな田舎に来たら、安価なものでも旬を知って食べることで、驚くほどの美味しいさに出会えるよ」 産地には、都会では知られていない魚や食材が、驚くほどの美味しさを秘めています。産地ならではの“少量多品種の魅力”はまだ広く知られていませんが、これは田舎暮らしの楽しみのひとつです。 都市部では「大勢の人に安定供給できること」が前提のサービスが中心にならざるをえません。また表面的な地方観光でも、知名度のない産品に触れる機会は限られています。 だからこそ、情報を知ったうえで産地に行って、“少量多品種の魅力”を堪能してほしい。“旬の美味しさを安価で味わう楽しさ”を、室戸でぜひ体験してみてください。