藁の瞬間火力で皮目だけを焼き切り、香ばしさと脂の旨味を引き出す「藁焼き」は、室戸に息づく理にかなった伝統調理法。鰹はもちろん、旬の地魚も焼きたて“温たたき”で味わえば、室戸ならではの特別な美味しさに出会えます。
高知県を代表する魚料理「鰹のタタキ」。その美味しさの核心にあるのが、「藁焼き」です。地元の米農家から頂いた藁を使い、職人さんが一気に炎を立ち上げる。
猛烈な火力で皮目だけを瞬時に焼き切り、内部はレアのまま。藁が燃える香ばしい煙が魚にまとわりつき、脂の旨味とともに口の中で広がるその瞬間は、まさに至福。
室戸のカツオ漁は江戸時代に始まって以来、地域の誇りとして育まれてきました。かつて漁師さんたちは、漁のあとに藁焼きで鰹を焼き、若手が先輩にふるまうーそんな光景が港のあちこちで見られたそうです。それは単なる食事ではなく、世代をつなぐ“昔から室戸で培われてきた伝統の継承”だったのです。
今ではその風景は少なくなりましたが、職人さんたちが「室戸の味」として、変わらぬ技と心で守り続けています。藁焼きは、漁師のまかないから始まり、祝いの席や祭りの場でも登場する郷土料理へと昇華しました。高知県の伝統料理「皿鉢料理(さわちりょうり)」冠婚葬祭や神事に供される大皿料理にも欠かせない一品。
室戸でも、地域の祭りや集まりで鰹のタタキが振る舞われ、人と人をつなぐ“絆の料理”として親しまれています。
室戸では、焼きたての温かいタタキを「温たたき(ぬくたたき)」と呼ぶ人もいます。脂ののった旬の魚に藁焼きを施し、焼きたてをすぐに口に運ぶ─。その瞬間、皮目の香ばしさと脂の甘みが一気に広がり、思わず目を閉じて味わいたくなるほどの美味しさです。
室戸「海の駅とろむ」では藁焼き体験ができ、焼きたての温たたきをその場で味わうことができます。
しかも、藁焼きにされるのは鰹だけではありません。室戸ではスマカツオと呼ぶヒラソウダカツオを「本鰹より美味しい」と語る地元の方も多くいます。グレ(メジナ)、ハガツオ、ブリなど、その日水揚げされた旬の脂の乗った魚が藁焼きで提供されることも珍しくありません。
私が2月、とある店で偶然いただいた「ハガツオのタタキ」。
藁の香りをまとったその一切れは、言葉に尽くせないほどの美味しさで、今も記憶の中に鮮やかに残っています。
室戸の藁焼き物語
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「室戸の藁焼き物語」と室戸のつながり
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ハガツオ
ハガツオは市場に出回りにくい希少な魚で、旬の美味しさは格別!地元の人々がその季節を心待ちにし、藁焼きで楽しむ味わいは室戸でしか出会えない贅沢。深海から湧くミネラル豊富な海水が、この特別な魚を育んでいます。 ハガツオ(キツネガツオ)は、サバ科ハガツオ属の魚で、大敷網や夜の海に灯りを焚いて魚を寄せる「夜炊き漁」で漁獲されます。 本カツオも“足が早い”ことで知られていますが、ハガツオはそれ以上。鮮度の劣化がとても早いため、産地で食べるのが一番とされています。陸路での輸送は関西までが限界では、という声もあるほど。関東の高級店には空輸されることもあります。 ハガツオの魅力は、なんといっても「身の美味しさ」。1年中楽しめる魚ですが、最も美味しいのは冬から初春にかけて。旬は脂の美味しさが際立ちます。ハガツオは脂がのるにつれて、身の色が淡いピンク色に変化していきます。室戸では「何月に食べたハガツオが一番うまかった」と語りながら、つぎに訪れる旬を期待している人も沢山います。 脂がのった旬の時期には室戸の伝統調理「藁焼き」が真価を発揮します。私は2月に室津港の「港の上」にある飲食店で、何気なくメニューから「地魚のたたき」を注文しました。たまたまその日の地魚が「ハガツオ」だったのです。その美味しさは、ズバ抜けていました。これはもう文章では伝えきれません。室戸に来て、実際に食べてもらうしかありません。 最近は漁獲量が減っていて、水揚げされた日でも飲食店で出会えるかは運次第。メニューに載っていなくても、お店の人に聞いてみてください。きっと「ハガツオ」の美味しさを語ってくれるはずです。 室戸近海は、黒潮の流れ、急深な海底地形、海洋深層水の湧昇によるミネラル豊富な海域など、様々な好条件が揃う豊かな生態系がある特別な漁場です。だから都市部では味わうことのできない“特別な旬の魚”と出会うことができます。 私たちが伝えたいのは、地元の人たちが日々の暮らしの中で大切にしている、でも表に出てこない価値です。それは、自然の恵みを生活に取り込む営みであり、旬を楽しむ素朴な喜び。大量生産や安定供給には向かないけれど、少量多品種だからこそ生まれる豊かさがあります。鮮度が落ちる前に味わえる、地産地消の贅沢。 そんな“暮らしの中の価値”を、都会に暮らす人にも知ってほしいし、感じてほしいと思っています。 -
スマガツオ
冬の室戸の食卓に並ぶ“スマカツオ”は、脂のりも旨味も抜群。それでいて手に入りやすく、本カツオより好きという人が多いという評判の魚。ごちそうが日常にあるという贅沢こそ、産地で暮らす人々のリアルな豊かさの一つです。 スマカツオ(ヒラソウダカツオ)は、サバ科ソウダガツオ属の魚です。 他の地域で「スマ」というと別の魚種を指す場合がありますが、室戸ではヒラソウダカツオのことを「スマカツオ」と呼んでいます。「スマカツオ」は地元では大人気で、室戸のご家庭でよく食べられています。室戸では、大敷網漁でスマカツオが漁獲されます、旬は冬。 地元では「カツオよりスマカツオの方が好き」と言う人も多く、しかも、たくさん獲れるため、室戸で暮らす人々にとっては、美味しくて手に入りやすい“日常のごちそう”。都市部で暮らす人々の中には「美味しいものは高い」という固定観念をもつ人も多いと思いますが、それを見事に打ち破ってくれる魚です。 旬の時期に脂がのったスマカツオは、藁焼きにしても絶品。「本カツオよりスマカツオの方がうまい」と語る地元の声も少なくありません。ある人はこう言います。「旬は小さいやつでもうまいよ。室戸のスーパーにも並ぶし、その値段を見てみてよ。まずは買って食べてみて。うまさにビックリするき」 もし冬に室戸を訪れることがあれば、ぜひ飲食店やスーパーで「スマカツオ」を探してみてください。地元の人に「スマカツオありますか?」と尋ねれば、あなたの見る目の高さに驚いてくれるはずです。そして、きっと喜んで室戸自慢の美味しさを語ってくれるでしょう。 室戸近海は、黒潮の流れ、急深な海底地形、海洋深層水の湧昇によるミネラル豊富な海域など、様々な好条件が揃う豊かな生態系がある特別な漁場です。だから都市部では味わうことのできない“特別な旬の魚”と出会うことができます。 私たちが伝えたいのは、地元の人々が日々の暮らしの中で大切にしている、けれど声高に語られることのない価値です。それは、自然の恵みを生活に取り込む営みであり、旬の素朴な楽しみ。大量生産や安定供給には向かないけれど、少量多品種だからこそ生まれる豊かさ。鮮度が落ちる前に味わえる、地産地消の贅沢。そうした“暮らしの中の価値”を、都会に暮らす人々にも知ってほしい。 そして、感じてほしいと願っています。 -
室戸春ぶり
室戸の海は、春にブリが訪れます。 ブリは産卵を控えて太平洋を南下する途中、豊富な餌を求めて室戸の東海岸を訪れます。 豊かな生態系の海域で、良質な餌を食べたブリは、栄養を蓄え「室戸春ぶり」として、人々に愛されています。 脂は豊潤でサラリ、旨味抜群。 田舎マップ管理人のおすすめは、お刺身だけではなく、加熱したお料理です。熱が入ると身にきめ細やかに入る脂が溶け出し、身がホロホロと口の中にほどけ、春の幸せが広がります。 鍋、照り焼き、藁焼き、しゃぶしゃぶ。一口一口、脂と旨味が口の中いっぱいに広がって、やみつきになります。 ブリの脂に「くどい」印象をお持ちの、あなた! ブリは冬の「日本海」に限ると思ってる、あなたも! 春が旬の室戸のブリを食べて、新しい発見をご自身の味覚で感じてください。 その美味しさには根拠があります。 実は、室戸の東海岸には、世界的にも稀な自然の恵みがあるんです。 深海には太陽光が届かないので、海洋深層水は光合成によってミネラルを消費されることなく、豊富に蓄えたまま、世界の海をめぐり、室戸の海に湧出しているのです。 この海域には、鯨も餌をもとめてやってきます、この豊かな海の生態系が水産資源の美味しい味の背景にあるんです。 詳しくは、「海洋深層水」をご覧ください。 -
メジナ(グレ)
磯釣りで人気のグレ。関東ではメジナという呼び名が一般的ですね。室戸にも日本中から釣りキチがやってきてグレを釣りに来てます -
カツオのたたき(藁焼き)
室戸伝統の「藁焼き」の技法は、旬の魚の皮目の脂を香ばしく引き立て、炎と香りが一体となって唯一無二の味わいを生み出します。そこに地元柑橘のタレや特別なお塩が、美味しさに感動的な奥行きを添えます。 高知県を代表する魚料理「鰹のタタキ」。 その真価は、藁焼きの本場でこそ発揮されます。 都市部でも鰹のタタキは提供されていますが、大量生産のガス焼きでは、藁焼き特有の香ばしさと深い味は再現しきれません。 炎が立ち上がる瞬間、藁が燃える香りが鰹にまとわりつき、皮ぎしの脂に絶妙に火を入れていく、その一口は感動的な美味しさです。 この料理には、江戸時代の逸話も残されています。 土佐藩主・山内一豊が、生魚による食中毒を防ぐため「焼いて食べるように」と領民に命じたところ、刺身を諦めきれなかった土佐の人々は、表面だけを炙って“焼き魚”に見せかけて食べ続けたとも言われています(諸説あり)。 鰹は「足が速い魚」と呼ばれるほど、鮮度の劣化が早い魚。だからこそ、旬の脂がのった焼きたての鰹を味わうことは、何よりの贅沢なのです。 美味しさの鍵は、一本一本の鰹の品質にあります。鮮度、脂ののり、中には「ゴシ」と呼ばれる部分的に硬くなった部位があるものもあり、個体によって味わいが異なるため、地元の人々は厳しい評価基準を持って、最良の一本を見極めます。 そして、藁焼きの魅力は何といっても超高温で瞬時に炙る技術。皮目を香ばしく焼き切り、藁ならではの燻した香りが鰹にまとわりつく。中はレアのままで温められた皮目の脂が口の中に広がる─これこそが、鰹のタタキの真骨頂です。 タタキの味を決めるのは、魚だけではありません。 タレに使われる柑橘にも、室戸ならではのこだわりがあります。地元で採れる多種多様な柑橘から、店ごとに選び抜かれた果汁が使われ、一皿ごとに異なる風味が楽しめます。その香りと酸味が、鰹の脂と絶妙に調和するのです。 たたきには欠かせない「お塩」はもちろん室戸産、ミネラル豊富な海洋深層水を丁寧に濃縮して作る塩が魚の美味しさを引き出します。 室戸では「海の駅とろむ」で、藁焼き体験ができます。目の前で炎が立ち上がり、鰹が焼き上がる様子を見届けたあと、その場で焼きたての「温たたき(ぬくたたき)」を味わえる─ これは、藁焼きの本場・高知県でもなかなかできない貴重な体験です。 炎の香りと海の風を感じながら頬張る一口は、まさに室戸の海そのもの。その味は、記憶に深く刻まれることでしょう。 -
ハガツオのたたき
田舎の楽しみ通信隊のお勧め!藁焼きの炎で香りを、柑橘の入ったお店独自のタレと絶妙な薬味、そして何よりハガツオ特有のしっとりした食感と旨味は最高です。室戸に来たら是非食べてください。産地ならでは、獲れない日はお店にもありませんので、注文時に一言聞いてみてね。旬の12月〜2月に味わっていただきたい一品です。 -
ブリのたたき
室戸春ぶりを伝統料理「たたき」で味わう。藁焼きによって、香ばしさと暖かさをまとったブリに、柑橘の入った自家製タレが絶妙な美味しさを生み出します。 -
グレのタタキ
室戸の藁焼文化は、グレ(メジナ)の美味しさを引き出します。皮目の美味しさと藁の香ばしさがたまりません。旬の時期、脂ののりきった身にはタタキの良さが際立ちますよ -
皿鉢料理(さわちりょうり)
いくつもの大皿に海の幸、山の幸をてんこ盛りにした祝いのお料理です。美しいお皿に豪快に盛り付けます。 -
星空キャンプミーティング
令和6年3月9日(土)開催!キャンプ場貸し切り!ご予約はこちら TEL:0887-22-0574 電車も高速道路もない室戸で見る『満天の星空』 と産地で『カツオの藁焼き体験』 & 『室戸のジビエ(別途500円)』が提供されます。ど田舎の山の中でキャンプを楽しみながら、産地でしか味わえない室戸グルメを堪能してください🏕※キャンプ道具は準備してください。レンタルはありません。 -
おきゃく文化
おきゃく文化
のこと募集中。- LINE
豊富な美味しい食材・料理、美味い酒、人情あふれる地元の人々、これらが揃っているため、隣近所・知らない人まで巻き込んで『おきゃく』(酒宴のこと)が始まることがよくあります。(室戸市HPより) -
柚子酢(ゆのす)
「ゆのす」という、柚子を絞った果汁です。「す」といいつつ、酢ははいってません、果汁のみです。酸っぱすぎず、尖ったところがなく、どこまでもぬけるような爽やかさ。「ゆのす」は日本人の醤油と同じレベルで、室戸の食文化を支えていると言っても過言ではありません。田舎寿司では爽やかな酢飯として、藁焼きでは香ばしさとの相乗効果が完璧なんです。ちなみに私は毎日焼酎にちょっと入れて、楽しんでます。


